特に非英語圏の患者とのコミュニケーションは難しい…。「せめて英語ぐらい勉強してきてくれよ」なんて思いながら、カタコトの日本語でやりとりするなんてことも。
リアルタイムに意思疎通をサポートしてくれるので、患者さんとのスムーズなコミュニケーションの一助になってくれます。
いちいち翻訳アプリを介して会話するのは本当にめんどくさい。
この記事はこんな先生にオススメです!
- 気軽に医療通訳に依頼できる環境ではない
- 英語以外の外国語で患者とやり取りするのをストレスに感じる
- 外国人患者のための説明資料を、事前に準備しておきたい
英語論文を読むのって、はっきり言ってメンドくさいですよね。ぼくなんか、抄読会の準備は毎回てんやわんやでした。そもそも英文を読むのが大学受験以来だったし、医学英語なんて全然わからないし。そのうえ、いろんな科をローテートする[…]
オススメの翻訳アプリは?
スマホで使える無料のリアルタイム翻訳だと、以下のふたつが有名です。
患者さんと話をしながら、その場でパパッと翻訳させるだけなら、スマホ版で十分です。
- DeepL
- Google翻訳
どちらも、スマホだけでなくパソコンでも利用できます。
Google翻訳を使っても、同じようなことはできるはずです。
方法①:日本語から目的の言語に直接翻訳する
いちばんシンプルなのは、日本語で作った元の文をそのままアプリに翻訳させる方法です。
実際のところ、コレでほとんど問題になることはないと思います。
今回は、以下のような状況を想定して例文を作ってみました。
インドネシア人の小児患者さんがRSウイルス感染症に罹患した。
哺乳量が低下しており、入院での点滴が必要だと考えている。
ただし、保護者は日本語・英語ともほとんど話せない。
そのため、インドネシア語で簡単な説明資料を用意したい。
【元の説明文】
RSウイルス感染症に伴う気管支炎と診断します。
咳がひどく哺乳ができていないため、症状が落ち着くまでは点滴を行います。
入院期間は数日から一週間の見込みです。
この説明文を、『DeepL』で翻訳していきます。
翻訳画面の設定
ソフトを起動すると、いきなり翻訳画面が表示されます。
これだけで、訳文が出来上がってしまいました。
これをそのまま患者さんに渡す…その前に、翻訳に間違いがないか確かめてみましょう。
『⇄』を押して、左右の言語を入れ替えると再翻訳ができます。
元の文と微妙にズレてしまいました。
「点滴を行う」が「点滴を行った」と、過去形になってしまっています。
複数の言語で「日本語→外国語→日本語」の変換を試してみたところ、下のような点でニュアンスのズレが起こりやすい印象を持ちました。
- 主語、目的語
- 時制
- 助動詞(できる、すべき、など)
日本語で文章を書くと、主語を省略しがちになるので、誤翻訳の原因になりやすいようです。
助動詞のニュアンスもうまく翻訳できないケースがありました。
こういったマイナートラブルを解決する方法としてオススメなのが、「いちど英語を経由して翻訳する」方法です。
方法②:英語を経由して目的の言語に翻訳する
英語を経由する方法は簡単です。
翻訳先の言語を「英語」に設定して英文を作ったあと、外国語に翻訳し直すだけ。
英文に翻訳した時点で、細かいズレをできるかぎり修正しておくと、外国語への翻訳もさらに正確になります。
この翻訳文を再度日本語に訳し直してみましょう。
『方法①:日本語→外国語の直接変換』と、『方法②:日本語→英語→外国語の間接変換』で仕上がりを比べてみました。
前者にあった時制のズレが、後者では解消されています。
翻訳アプリで説明資料を作るときの注意点
細かいニュアンスは伝わりづらい
ここまでで解説したように、助動詞や時制などはズレが生じるリスクがあります。
あまり助動詞に依存しない文章をつくるようにすれば、医師-患者間の認識のズレを予防できると思います。
また、翻訳アプリで作成した文書でやりとりする場合、口頭で会話するよりもアイコンタクトやジェスチャーでのコミュニケーションが少なくなってしまいます。
「訳文を渡して終わり!」ではなく、患者と直接コミュニケーションを取ることも意識したほうが、後々のトラブルを防ぐのにも役立つでしょう。
翻訳後の文章は医療通訳に確認してもらうのが望ましい
冒頭でも注意喚起した通り、翻訳文が100%正確かどうかは保証ができません。
翻訳について責任を持てる立場の人に、内容を精読してもらうほうがよいでしょう。
医療通訳に依頼できるのが理想ですが…必要なときにいつでも呼び出せるわけではないでしょう(そもそも呼び出せるなら翻訳アプリを使う必要性が低いですし)。
せめて、患者にも「あくまで翻訳アプリで作成した文書なので、内容の正確性は追って医療通訳に確認してもらう)」と事前に説明しておいたほうがよさそうです。
元の日本語も併記や保存しておくとよい
翻訳後の文面といっしょに、翻訳前の日本語も併記しておくとよいでしょう。
翻訳文だけを患者に渡したり、保管しておいたりすると、あとあと説明し直すときに何がなんだかわからなくなります。
他の医師や看護師が内容を追って確認できるようにする意味でも、翻訳前の日本語を保存しておくのは大事です。