常勤先の給料や、医局から斡旋されるバイト代では物足りない。
かといって、経験のない分野のバイトを始めるのもちょっと気が引ける…
そんな先生方に向けて、この記事では、ぼくが実際に経験した7種類のスポットバイトについて、給与だけでなく、仕事内容、忙しさ、専門外でも始めやすいかどうかまで紹介します。
ぼく自身小児科医で、小児科以外のスポットバイトも多数経験してきました。
やっぱりはじめのうちは、専門外の業務に応募するのに悩む気持ちもよくわかります。
この記事を読んでもらえれば、先生方がスポットバイトを始めるハードルがぐぐっと下がるはずです。
この記事はこんな先生にオススメです!
- スポットバイトに興味はあるが実態が分からない
- 時給や紹介会社の相場観を知りたい
- 本業以外の収入源を作りたい
- 6年間で経験した7種類のスポットバイトの時給換算
- それぞれのバイトの実態
- スポットバイトの探し方のコツ
経験したスポットバイト、時給換算まとめ
ぼくがスポットバイトを始めた理由は、当時手を付けはじめた投資のための種銭作りでした。
当時の勤務先では平日も含めて月に3〜4日は休みをもらえたので、予定に合わせて勤務に応募できるスポットバイトはぴったりだったんです。
「勤務医の給料は減る」...最近よく耳にするようになりました。ぼくが医者になった頃は「これで将来安泰!」なんて思ったものですが、それから10年も経てば時代は変わるものですね。医師免許を持っているだけでは、将来安心できないみたいです。かといっ[…]
まず全体像から見てみましょう。地方都市を中心に、以下の7種類を経験しました。
| 拘束時間 | 給与(額面) | 時給換算 | 始めやすさ | |
| 当直代行 | 13〜48時間 | 4万〜23万円 | 約3,000〜4,800円 | ◯ |
| クリニック外来 | 3〜10時間 | 4.5万〜13万円 | 約10,000〜15,000円 | ◯ |
| 透析クリニック | 8時間 | 6万円前後 | 約7,500円 | ◯〜◎ |
| 美容クリニック | 9〜10時間 | 7万〜9万円 | 約8,000〜10,000円 | ◎ |
| ワクチン | 8〜9時間 | 6.7万〜12万円 | 約7,500〜13,000円 | ◎ |
| 健診 | 5〜9時間 | 4万〜12万円 | 約4,500〜13,000円 | ◯ |
| 献血問診 | 6〜7時間 | 6万〜7万円 | 約10,000円 | ◎ |
ここからは、それぞれの中身を詳しく見ていきます。
当直代行
- 給与:7万円(時給換算で3,000〜4,800円程度)
- 勤務時間:昼~翌朝
- 忙しさ:案件を選べば非常に楽
- 未経験でのはじめやすさ:後期研修医レベルの内科診療ができるならハードルは低い
一番割安なのが当直代行のバイトです。
ただし、当直は仮眠が取れる現場も少なくなく、ずっと働いているわけではありません。
時給換算だけで判断すると損をした気分になりますが、実際の負荷感とは少しズレがあります。
とはいえ、呼び出しが多い病院に当たると寝られないまま朝を迎えることもあり、運次第な部分も多いです。
一言で当直と言っても、病院によって中身はまったく違いました。ぼくが経験した3パターンを紹介します。
内科の小規模個人病院の当直
慢性期やリハビリ主体の高齢の患者さんが大部分を占めるような病院でした。
昼から入って翌朝までの勤務で7万円。
実際の業務ですが…拍子抜けするほど何も起こらないまま終わりました。ほとんど記憶にも残っていないぐらいです。
それだけでなく、院内PHSの通信範囲が広く、院外に出て自由に過ごせたのもかなり好印象でした。
おやつを買いに行きがてら近くのコンビニまで散歩したりと、拘束時間内でもかなりゆったりと過ごすことができました。
ただし、この施設の当直バイトは募集自体がほとんど回ってきませんでした。これだけの好条件だと、やはりかなりの人気案件だったようです。
たまたま滑り込めたこの一回は、運が良かったのでしょう。
中規模病院の小児科当直
朝から翌朝までの24時間で10万円。
本職の小児科の仕事をすればいいだけなので、事前準備がいらず一番気楽でした。
ただし、自分にも臨床経験がある分、施設ごとのローカルルールと合わず、違和感を覚えることも少なからずありました。
業務は入院患者さんの回診と救急外来対応でした。
近隣の開業医が頑張ってくれているおかげで、こちらへの受診数はそれほど多くもなかったです。
重症例でてんやわんや、なんてこともありましたが、近隣のより大きな病院に搬送する体制が整っていたのが救いでした。
早々に見切りをつけて搬送してしまえばよかったので、気持ちに余裕をもって対応できました。
より高次の医療機関であれば、体制が整っているぶん、自分で最後まで対応をしなければいけませんから…。
ここのバイトも寝当直に近く、息抜きやパソコン仕事など、有意義に時間を使えることが多かったです。
こちらの施設も、院外PHSで連絡を受けてから一定時間内に戻れれば良いというルールでした。
食事に出たり、近くのジムに行ったりとQOLは高く過ごせました。
院内のシャワーも自由に使えたうえ、タオルも使いたい放題だったのでありがたかったです。
精神科病院の当直
昼から入って翌朝までの勤務で9万円。
精神科病院の当直は初期研修の時以来だったのですが、改めてやってみると、内科系の病院当直よりも仕事量としては少なかったです。
決まった仕事は、夜1回のラウンドくらい。
21時ごろになっても患者さんたちはまだ起きていて、談話室などに集まっていました。
病棟見回りのときに、後ろをひたひたとついてくるのが正直怖かったです。
病棟から出るときにもついてこないか…とヒヤヒヤしましたが、(幸い?)おとなしく談話室に戻っていってくれました。
基本的には静かな当直だと聞いていましたが、夜中に患者さんの1人が火災報知器のスイッチを押してしまう騒ぎがあり、すっきり眠れる夜ではありませんでした。
それでも結局、カルテを開くことは一度もありませんでした。
透析クリニック
- 給与:7万円(時給換算で10,000円弱程度)
- 勤務時間:朝〜夕
- 忙しさ:トラブル対応の頻度は多くない
- 未経験でのはじめやすさ:後期研修医レベルの内科診療ができるならハードルは低いが、一部業務の専門性は高い
ぼくが最も継続して受けていたのが、地方都市の透析クリニックでの透析管理バイトです。
透析中の患者さんの様子を見回り、問題がないか回診記録を書く当番のようなものでした。
拘束時間の割に、実働は1時間程度だったでしょうか。残りの時間は控室でゆっくり過ごせました。
朝ごはんを買って出勤し、控室で食べ終わった頃に回診の依頼が来る。
回診が終わってしばらくすると、お昼ごはんが運ばれてくる。
食べて昼寝をしたり、仕事をしたりしていると、16時過ぎごろに「本日の透析、全員終了しました」と連絡が来て業務終了。
そんな流れでした。
ただし、トラブルが起きないわけではありません。
透析に関連したトラブルもあれば、関係ないようなちょっとした怪我の処置をしたり。
別日のシフトに入っていた医師からは、「透析中の心筋梗塞で他施設に緊急搬送するのに付き合った」という話を聞いたこともあります。
ぼくは小児科医なので、正直に言って透析の詳しい知識はありませんでした。
当初は透析の本で勉強したり、腎臓内科の同期に教えてもらったりと、緊張しながら準備したことを覚えています。
結局は、透析設定などの調整は別で業務をしている担当専門医に相談が行くことがほとんどでした。
「血圧が下がったので除水量を調整する」といった判断も、看護師さんの方が慣れているので、その通りにお願いすることが多かったです。
病院側としては「それでもよい」と言ってくださり、定期的に呼んでもらっていました。
ただし、透析バイトは施設によって医師に求められる役割がかなり異なります。
応募する前に「透析専門医への相談体制」「急変時の対応」「医師に求められる業務範囲」を確認しておきましょう。
美容クリニック
- 給与:7〜9万円(時給換算で8,000〜10,000円弱程度)
- 勤務時間:朝〜夜
- 忙しさ:実働時間は少なめ
- 未経験でのはじめやすさ:かなりハードルは低いが、清潔感と患者対応に気を遣う
美容皮膚系のそれなりの大手クリニックを2院、痩身系の薬剤処方をメインでやっている小規模クリニックを1院経験しました。
どのクリニックでもメインの業務は、治療内容とリスクの説明でした。
患者さんの多くは「治療を受けるか どうか迷っていて詳しく相談したい」というより、「やるのはもう決まっているから、堅苦しい問診は早く済ませたい」という雰囲気でした。
問診の内容やカルテ記載はテンプレート化されていて、業務に慣れるのは早かったです。
説明の仕方をまとめた、スポットバイト医向けの動画資料を作っているようなクリニックもあり、バイトで業務を回すのに慣れた体制だなと感心しました。
トラブル対応は、偶然かもしれませんが一度もありませんでした。
美容クリニックでの業務は、医学知識より接客の丁寧さが評価される場面が多かった印象です。
痩身系のクリニックでは、GLP-1などの処方箋作成も担当しましたが…
それなりの副作用もある薬を流れ作業的に出すようなクリニックだったので「これはちょっと…」と思い、その後案件は受けていません。
休憩のための環境は、それぞれのクリニックでまったく違いました。貸し切りの診察室で自由に過ごせる施設もあれば、看護師さんの詰め所の片隅にデスクを与えられるだけという施設もありました。周りを人が絶えず行き来し、電話対応の声や雑談も聞こえてくるので、内職に集中できる環境ではありませんでした。
自由診療の現場ならではの厳しさも垣間見えました。朝礼で当月の売上目標と不足額が発表されたり、顧客獲得数の多いスタッフが表彰されたりする場面があり、興味深く見ていました。
予防接種・ワクチン問診
- 給与:7万円(時給換算で9,000〜10,000円弱程度)
- 勤務時間:朝〜夕
- 忙しさ:スキマ時間はほとんどない
- 未経験でのはじめやすさ:トラブルの内容も限定的なのでかなりハードルは低い
大きく分けて2パターンを経験しました。
インフルエンザワクチンの巡回接種
移動健診会社のスタッフとバンに乗り合わせて、企業を3社ほどまわり、各施設の会議室などでワクチンを打つという形式でした。
拘束時間は休憩・移動時間込みで8時間程度でした。
やることはひたすら問診と接種の繰り返しです。
最初の数人でリズムを掴んだら、あとはひたすら問診→接種を繰り返すだけ。
普段はなかなか入る機会のない会社のオフィスに入れるのは新鮮でした。
「医療機関外で仕事をする」という面白い経験になりました。
自治体のコロナワクチン接種
コロナワクチン特需があった2021年〜2022年ごろに限定的に募集があった業務です。
現在は同様の案件はほとんどありません。
拘束時間は7時間程度、時給にして10,000円でした。
自治体が用意した接種会場で、問診を担当していました。注射は看護師さんが担当してくれていました。
ワクチンの種類が頻繁に変わる時期だったこともあり、接種者からのこまごまとした質問に答えなければならず、インフルエンザワクチンの案件に比べて知識のアップデートが必要でした。
どこかの自治体でアナフィラキシーによる死亡例が出たときは、さすがに気を引き締めました。幸い、自分が担当した会場でのトラブルは血管迷走神経反射(VVR)程度で済みました。
健診
- 給与:4〜12万円(時給換算で7,500〜13,000円程度)
- 勤務時間:朝〜昼過ぎ、あるいは夕方まで
- 忙しさ:トラブル対応の頻度は多くない
- 未経験でのはじめやすさ:比較的ハードルは低いが、清潔感と受診者対応に気を遣う
内科専門ではないので、特殊健診やバリウム健診は担当せず、基本的な問診と診察の業務のみでした。
案件によっては、時給換算でと7,500〜13,000円とかなり幅がありました。
これは健診受診者の数、要するに「忙しさ」によって差が出ていたように思います。
健診受診者が少なければ、健診事業者に入るお金も減るので、バイト代も安くなるのは仕方がないですね…。
健診場所はさまざまで、地元企業のこともあれば、都心部から車で2時間以上かかるような田舎に出向くこともありました。
宿泊補助が出たので小旅行のつもりで引き受けましたが、今思えばコスパは悪めの案件だったかもしれません。
業務内容自体は難しいものではありません。
フィジカルアセスメントに習熟していなければいけないというよりは、「気になった・異常だと思ったら精密検査を受診してもらう」という健診本来のスタンスで臨めばいいと思います。
献血の問診
これはかなり特例で、日本赤十字社にツテがないとそもそも応募ができないかもしれません。
ぼく自身、知人から個人的に紹介してもらって一定期間働きましたが、仲介業者経由で案件が出回っているのを見たことはないです。
業務内容は、問診室でドナーの方の体調確認をひたすら繰り返すというもの。
ときどき心電図チェックをしたり、VVR対応をしたりといったことがありますが、なにか気になる点がない限りは診察をすることはありません。
一定の割合で、何らかの事情(血圧が高い、特定の薬を飲んでいる、など)で献血をお断りすることがあるので、いかにトラブルにならずに説明するかというスキルが大事です。
時給10,000円、1回の実働時間が6〜7時間で、1日がかりで60,000〜70,000円といったところです。
スポットバイトの探し方
自分にあったスポットバイトを見つけるコツは、とにかく複数の紹介会社に登録しておくこと。
同じ「スポットバイト」でも、会社によって得意な案件のジャンルがはっきり分かれている印象です。
ワクチン問診や健診の案件が多い会社、美容問診の案件が多い会社など…
地域にもよるのでしょうが、各社によって紹介されやすい案件が違います。
具体的には、スポットバイトを探すなら
- まず2〜3社登録する
- 1〜2週間、一斉メールでの募集案件に目を通す
- 地域や業務内容ごとの相場を把握する
- 気になる案件に応募する
1社だけに登録するより、複数登録して案件の届き方を比べるほうが、結果的に選択肢が広がります。
また、繰り返し引き受けている案件だと、登録者全体に募集がかかる前に、担当者から個別で連絡が来ることもあります。
経験や専門性によっては、登録初期から個別で割の良い案件の相談が来るかもしれません。
※本記事には広告を含みます。当直のたびに体がきつい。給与に大きな不満があるわけではないけど、このペースであと何年働けるのかは分からない。かといって、積極的に転職を考えているわけでもない。——そういう状態の先生は、多い[…]
どのスポットバイトがオススメ?
「特定の業種がオススメ」と一概には言えません。
スポットバイトに何を求めるかによって、案件を受けたときの満足度が変わるからです。
- 自分のやりたいことをやりながら、のんびり過ごせる業務がいい
- お小遣い稼ぎ程度でいいので、短時間で終わる案件がいい
- とにかくコスパよく報酬が欲しい
など、自分がどんな目的でスポットバイトをするのかを明確にしましょう。
「とりあえずスポットバイトというものを経験してみたい!」という先生には、まずワクチン接種の案件から探してみるのをオススメします。
まとめ。小児科勤務医のスポットバイトの記録
今回は、ぼくが経験した7種類のスポットバイトについて、時給換算つきで解説しました。
- 当直・病棟系は時給換算では低いが、仮眠できるかどうかで満足度が変わる
- 透析非常勤は定期案件になりやすい
- 美容クリニックとワクチン問診は時給が高めだが、専門性とは別の緊張感がある
- 紹介会社は複数登録して比較するほうがよい
種銭作りから始まった副業でしたが、振り返ってみれば、いろいろな働き方を知るいい経験になりました。
実際にスポットバイトをするかどうかは別にしても、紹介会社に登録してどんな案件があるのかを覗き見てみるのも、将来の選択肢を広げるために役立つはずです。



